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【ミケランジェロと理想の身体】作品の見どころや彼の人生に迫る!!

ミケランジェロ(作品ダビデ)

国立西洋美術館にて現在開催されている
『ミケランジェロと理想の身体』!!

この展覧会では彼の彫刻家としての一面に
焦点を置いていますが、
今回の記事ではミケランジェロという人物について
彫刻以外での傑作も含めてご紹介していきます。

とはいえ彼の活躍は幅広く、
一気にすべてをご紹介すると
収拾がつかなくなりそうなので、
この企画展に行く前の簡単な予習感覚で
お読みいただければと思います。

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ミケランジェロとは?

14世紀から17世紀まで続いたイタリアのルネサンス期。

特に15世紀末から16世紀初期までの期間は
「盛期ルネサンス」と呼ばれ、
ルネサンス芸術が最も盛んな時期にあたります。

そして、この盛期ルネサンスにおいて
レオナルド・ダヴィンチやラファエロに並び、
ルネサンス三大巨匠のひとりとして活躍していたのが
ミケランジェロ・ブオナローティーです。

生い立ち

ミケランジェロは、1475年5月6日、
現在のトスカーナ州にあるカプレーゼという町に
5人兄弟の次男として生まれました。

ちなみに当時「カプレーゼ」という名称だったこの町は、
ミケランジェロ生誕の地ということで
「カプレーゼ・ミケランジェロ」に改名されています。

ミケランジェロ自体、生まれてまもなく家族とともに
フィレンツェへ引っ越すのですが、
生誕の地として町名が改名されるなんて、
いかに彼が町の誇りだったかがわかりますね。

そんなミケランジェロが
幼少の頃に興味を示していたのは学業ではなく
教会の絵画を鑑賞することや
模写することでした。

そして13歳のとき、フィレンツェの画家、
ドメニコ・ギルランダイオの元へ弟子入りします。

当初ミケランジェロの父親は
学業に精を出すよう促していましたが、
絵画に興味を示す息子の姿を見て、
最終的には弟子入りすることに賛成したのでした。

メディチ家との出会い

ルネサンス期の芸術家には、財政支援をしてくれる
いわゆる「パトロン」というものがいました。

メディチ家は、当時のフィレンツェにおいて
最も影響力のあったパトロンでした。

メディチ家自体、歴史の長い一族なので
これまた語り出すとキリがありませんが、
ひとことで言うと
「メディチ家抜きではルネサンスは語れない!」
というくらい大きな存在でした。

そんなメディチ家とミケランジェロが出会ったのは
ミケランジェロが15歳の頃。

当時、メディチ家が設立した美術学校の庭で
ミケランジェロが彫刻を作っていると、
当主のロレンツォ・デ・メディチが現れ、
その才能を認められたのが始まりでした。

その後ミケランジェロはメディチ家へ招かれ、
ロレンツォと彼の弟・ジュリアーノの
子供達と共に育ちました。

ちなみにこの共に育った子供達のうち、
ロレンツォの子供・ジョヴァンニと
ジュリアーノの子供・ジュリオは
のちにローマ教皇となり、
ミケランジェロへ作品の制作を命じる立場になります。

多才すぎるミケランジェロ〜現在にまで残る傑作の数々

冒頭でも書いたように、
ミケランジェロはさまざまな分野で
天才的な才能を発揮していました。

ミケランジェロ自身は
自分のことを「彫刻家」と呼んでいたそうですが、
彫刻以外にも多くの傑作が現在にまで残っています。

彫刻編

彫刻家・ミケランジェロが残した傑作のうち、
ここでは代表作をふたつご紹介します。

《ピエタ》

作品ピエタ

まずご紹介するのは《ピエタ》。

この作品のモチーフは
聖母マリアと十字架から降ろされたキリストで、
聖母マリアが息絶えたキリストの身体を
優しく抱きかかえている姿が表現されています。

イタリア語で慈悲などの意味をもつ「ピエタ」。
その題名の通り、聖母マリアの慈悲深さや
キリストへの愛が伝わってくる作品です。

ミケランジェロがこの作品を制作した当時、
北ヨーロッパでは、
聖母マリアがキリストの亡骸を抱きかかえるという
このシーンが彫刻の題材としてよく用いられていました。

そのため、他にも多くの彫刻家が
このシーンを題材とした彫刻を制作しましたが、
その中でも有名なのが
ミケランジェロの《ピエタ》です。

ミケランジェロが有名になるきっかけになったとも
言えるこの作品が制作されたのは
なんと彼が若干22歳のときでした。

しかも何年もの歳月をかけたわけではなく、
1年未満で完成させたのですから驚きです。

そしてさらに興味深いのが、
自分の作品にサインを残さない主義の
ミケランジェロが、
唯一《ピエタ》にはサインを残していたということ。

なぜこの作品にだけサインが残っているのか?

ジョルジオ・ヴァザーリの伝記によれば
次のような背景があったそうです。

この彫刻はもともと、
フランス人枢機卿が自分の墓の記念碑として
ミケランジェロに制作を依頼したものでした。

完成後、
この枢機卿が埋葬場所に選んでいた教会に設置され、
《ピエタ》を観に多くの人々が訪れました。
(現在はバチカン市国の
サン・ピエトロ大聖堂に収蔵されています。)

訪問者たちは大絶賛しながら鑑賞したわけですが、
その中のひとりが、
「これって誰が作ったの?」と誰かに聞きました。

すると別のひとりが、ミケランジェロではなく
別の彫刻家の名前を挙げたそうなんです。

その会話を聞いていたミケランジェロは、
作ったのは自分だ!ということで
ある晩、のみを片手に
自分の名前を掘り入れたのだとか…。

《ダビデ像》

作品・ダビデ

《ピエタ》を完成させてから4年後の1501年、
ミケランジェロは《ダビデ像》の制作を始めました。

ダビデというのは、聖書に出てくる
巨人兵・ゴリアテを倒した戦士です。

この作品は高さ5メートルにも及ぶ大作で、
パッと見た肉体美もさることながら、
手に浮き出ている血管などの細部まで
忠実に再現されています。

現在はフィレンツェのアカデミア美術館に
収蔵されていますが、
シニョーリア広場にもレプリカが設置されています。

ちなみに《ピエタ》も《ダビデ像》も、
ミケランジェロがまだ20代の頃に制作されたものです。
まさに若き天才ですね…!

絵画編

ミケランジェロは、彫刻に加え、
教会の天井画や壁画の制作を
依頼されることもありました。

ここでは、バチカン市国にある観光名所のひとつ、
システィーナ礼拝堂の天井画と壁画をご紹介します。

《システィーナ礼拝堂天井画》

システィーナ礼拝堂天井画イメージ

システィーナ礼拝堂・天井画イメージ(イラスト)

システィーナ礼拝堂の天井画は、
ローマ教皇・ユリウス2世からの依頼のもと
制作されました。

しかし、実は最初にユリウス2世が依頼したのは
ミケランジェロと同時期に
人気を集めていたラファエロだったのです。

依頼を受けたラファエロは、
彫刻家としての名声を着実にものにしていた
ミケランジェロに対する嫉妬心からかライバル心からか、
「ミケランジェロにやらせてください」
とユリウス2世を説得したのでした。

彫刻家であるミケランジェロに
絵は描けないだろうと踏んでの提案でしたが、
ミケランジェロはラファエロの期待を見事に裏切り、
この大業を4年で成し遂げました。

幅約14m、奥行き約40mの天井一面に描かれた
天井画はまさに圧巻です。

動機はともあれ、ラファエロの提案がなかったら
現在この大作を見ることができなかったと思うと
おもしろいエピソードですね。

《最後の審判》

続いてご紹介するのは《最後の審判》。

幅約13m、高さ約14mと、
こちらも壮大なスケールで描かれた大作です。

《最後の審判》は、クレメンス7世からの依頼により
1536年から1541年に制作されました。

ちなみにこのクレメンス7世は、
先に出てきたメディチ家の
ジュリアーノの子供・ジュリオです。

ミケランジェロは自分の作品にサインを書く代わりに
自画像を描いていたことで知られていますが、
《最後の審判》もそのひとつです。

自画像といっても、《最後の審判》に描かれている彼は
身体の中身が抜き取られたような、
ひょろひょろの皮の状態ですが…。

もしシスティーナ礼拝堂に行ったら、
抜け殻のように描かれたミケランジェロの自画像を
探してみてください。

建築編

続いてご紹介するのは
建築家としてのミケランジェロ。

ミケランジェロが設計した建築物もまた、
世界中から観光客が訪れるスポットになっています。

《ラウレンツィアーナ図書館》

ラウレンツィアーナ図書館

フィレンツェにあるラウレンツィアーナ図書館。

この図書館にある蔵書はもともと、
メディチ家のコジモ1世やロレンツォなど、
メディチ家一族が集めていたものでした。

メディチ家は1494年のイタリア戦争がきっかけで
フィレンツェから追放され、
これらの蔵書は
ロレンツォの子供・ジョヴァンニによって
ローマで保管されていました。

その後、1523年にジュリオ(つまりクレメンス7世)が
ローマ教皇に選ばれると、クレメンス7世は
ミケランジェロに図書館の設計を命じたのでした。

ミケランジェロは1524年頃から10年にわたって
設計に携り、図書館は1560年に完成しました。

《サン・ピエトロ大聖堂》

サンピエトロ大聖堂

バチカン市国にあるサン・ピエトロ大聖堂は、
大きなクーポラ(ドーム)が特徴的です。

サン・ピエトロ大聖堂の建設自体は1506年に開始され、
ミケランジェロが設計の依頼を受けたのは
彼が74歳のときのことです。

終わりが見えないこの建築物に、
キリスト教会がミケランジェロに
助けを求めたのでした。

実際完成したのは1626年で、
ミケランジェロは完成した姿を見ることなく
亡くなってしまったのですが、
彼は亡くなるその年まで、14年間監督し続けました。

こまめに現場に行って監督するのは
体力的にきつかったので、
家から設計図やデザインなどを送って
監督していたそうです。

こうして見ると、彫刻に絵画に建築に、
ミケランジェロの教会への貢献度は
計り知れないですね。

実は詩人としての一面も…!

彫刻家、画家、建築家として活躍していた
ミケランジェロですが、
実は詩人としての一面もありました。

生涯にわたって詩を書いており、
そのうち300以上もの詩が現在にまで残っています。

愛や性欲、精神など、詩のテーマはさまざま。

生前に大々的に公表されることはなかったものの、
中には編曲され、曲として残っているものもあります。

本当に芸術的才能にあふれた人物だったということが
わかります。

国立西洋美術館にて6/19〜9/24まで開催!『ミケランジェロと理想の身体』

いかがでしたか?

ここからは、記事の冒頭でご紹介した
企画展『ミケランジェロと理想の身体』の
概要や見どころをご紹介します。

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必見!《若き洗礼者ヨハネ》と《ダヴィデ・アポロ》

この企画展の見どころはなんといっても
《若き先礼者ヨハネ》と《ダヴィデ・アポロ》!

現存しているミケランジェロの大理石彫刻は
世界でたったの約40点しかありません。

そのうちの2点にあたるのがこれらの作品で、
しかも今回の企画展が初来日なんです。

これは必見です…!

でも、何がそんなにすごいの?
という素朴な疑問を解決するために、
作品別に簡単に見ていきましょう。

何がすごい?ひとこと解説【若き洗礼者ヨハネ編】

《若き洗礼者ヨハネ編》は、
1495年から1496年に制作されました。

モデルになっているのは、
6歳か7歳の少年と考えられています。

実はこの作品、1936年のスペイン内戦の被害に遭い、
頭部は焼けこげ、回収されたときには
4割程度しか残っていなかったのです。

1994年に修復プロジェクトが開始され、
破壊される前に撮影されていた写真をもとに
修復されることになりました。

頭部のこげた部分を消すためのレーザー技術や、
3Dの修復技術を用いて見事に修復され、
現在でも見られるというわけです。

何がすごい?ひとこと解説【ダヴィデ・アポロ編】

次に紹介する《ダヴィデ・アポロ》は、
1530年頃に制作されたと考えられていますが、
実は未完成の状態。

未完成で、しかもモデルが誰なのか
今でも謎に包まれています。

ギリシャの神アポロという説もあれば、
あの《ダビデ像》と同じ、
ゴリアテを倒したダビデという説もあります。

もしダビデだとしたら、
モデルの足元にある塊はゴリアテの頭だろうとも
考えられています。

この作品が
《ダヴィデ・アポロ》と呼ばれているのも、
モデルがどちらなのか不明なためです。

未完成の作品を見ることは
なかなかない機会ではないでしょうか。

《若き洗礼者ヨハネ》も《ダヴィデ・アポロ》も、
500年前の作品をこうして日本で見られること自体
奇跡に近いような気がします。

また本展では、これらふたつの作品以外にも
古代ギリシャ・ローマ時代と
ルネサンス期の作品約70点が展示されます。

ぜひ足を運んでふたつのことなる時期の彫刻を
見比べてみてください。

展覧会情報

CAFÉすいれん・展覧会特別メニュー!

国立西洋美術館館内にあるCAFÉすいれんでは、
展覧会特別メニュー(1日限定20食)を提供しています。

こんがり焼いたチキンと
パンツァネラ(パン入りのサラダ)の盛り合わせに加え、
バジルチーズクリームとトマトが添えられています。

おいしそうですね!

展覧会を楽しむついでに、
フィレンツェの郷土料理にも触れてみてはいかがでしょうか?

「フィレンツェで昼食を」
ソフトドリンク付き1680円(税込)

会期:6月19日(火)〜9月24日(月)
場所:国立西洋美術館
開館時間:9:30〜17:30(金・土は21:00まで)
休館日:月曜日、7月17日(火)
※ただし、7/16、8/13、9/17、9/24は開館

 

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imako

翻訳、ときどき執筆、ときどきアート鑑賞。
のんびり生きています。

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