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【東京・国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る

【国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る

(アイコン画像 版権 : pixhound )場所:秋田県立美術館

打ちっ放しのコンクリートで
壁面がつくられた建物は、
イベントホールやレストランなどで、
時折、見かけますね。

ことに1980年代から、
多くの場所でこの壁のスタイルが
用いられるようになったと

当時少女だった筆者にも、
記憶があります。

今でこそポピュラーになった
このモダンな建築スタイルが、
広がるきっかけとなった

ある建築家がいます。

彼の名は安藤忠雄。
1941年生まれ。

1970年代に作られた彼の建築には、
すでにこのスタイルのものが
登場しています。

当時としては
かなり斬新な建築物を
生み出した彼は、

なんと独学で建築を学び、
国内外で評価される建築界の巨匠へと
昇りつめた人物です。

近年はあの「表参道ヒルズ」や、
「東急東横線渋谷駅」を手がけ、

2020年に東京オリンピックを開催する
新国立競技場デザインコンペの
審査委員長としても
知られていますね・・・!

そんな
安藤忠雄の世界に迫る展覧会が、
新国立美術館でこの秋から
開催されます。

美術館で建築の展示・・・?

ちょっと珍しいような気もしますが、
建築の分野もアートであることを、
存分に感じられるはず・・・!

彼の代表作や、作風などについて、
拙文ながらご紹介しましょう。

写真家・荒木経惟については
【写真家・荒木経惟】センチメンタルな旅 1971-2017- 〜終わらないセンチメンタルな旅〜
こちらをご覧ください。

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Contents

世界的な建築家 安藤忠雄氏とは?

2017年秋から、新国立美術館で
その作品展が開催される安藤忠雄氏は、
1941年生まれ。

現在も第一線で活躍し続ける
建築家です。

海外で手がけた建築物も多数で、
「世界のアンドウ」
といわれるほど。

そんな安藤氏、
実は建築家としては、
かなり異色の経歴の持ち主です。

元プロボクサー?! 異色の経歴の持ち主

一般的に建築家というと、
大学で建築を専攻して、
建築士の資格を取って・・・

という方がほとんどかと思いますが、
安藤忠雄氏は、工業高校の出身。

高校時代は、
なんとプロボクサーの
ライセンスを取得。

これは試合に出て、
お金を稼ぐためだったようです。

20歳の頃、
近代建築の巨匠・ル・コルビュジェの
作品集を見て衝撃を受けた安藤氏は、

設計事務所でアルバイトをしながら
独学で建築を学び、
一級建築士の資格を取得しました。

また1965年から4年ほどかけて、
アメリカ、ヨーロッパ、
アフリカ、アジアを巡る
放浪の旅をしたことでも知られています。

自由でパワフルな
精神を感じますね・・・!

独学で学び、世界的な建築家に昇りつめた鬼才

独学で一級建築士の試験に
合格した安藤忠雄氏は、

1969年に
自身の建築研究所を設立します。

それまでの建築概念を打ち破るような
作品を次々と発表し、

ポストモダン建築、
ひいてはミニマリズム建築の
スタイルを牽引する建築家として、

世界に知られる存在に
昇りつめたのです。

1995年、
建築界のノーベル賞ともいわれる
プリツカー賞を、

日本人では
丹下健三、槇文彦に次いで
受賞しています。

1997年には、
東京大学工学部建築学科の教授にも就任。
2003年の退官後、名誉教授を経て、
特別栄誉教授の称号を得ています。

まるで水の上に佇むような、
ドイツの「ランゲン美術館」や、

イタリアの歴史的建造物である
「プンタ・デラ・ドガーナ」と
融合を実現した現代美術館など、

海外でも、
大規模な施設の建築を多数手がけ、
話題を集めてきた安藤氏。

最先端の現代アートを展示する美術館から、
古墳群をそのまま見せる博物館まで、
その仕事はバラエティに富んでいます。

日本のみならず、
世界で施設づくりの名手として
知られる稀代の建築家なのです。

知っておきたい! 安藤忠雄のデザインワーク

【国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る

そんな安藤忠雄氏は、
これまでに一体どんな建築を
生み出してきたのでしょうか?

建築関係には疎い、という女子でも
もしかして

「ここには行ったことがある!」

というスポットが
あるかもしれません・・・!

モダンで機能的なデザインで、時代を切りひらく

安藤忠雄氏が手がけた
代表的な建築物をあげる前に、

そのデザイン的な特徴について
触れてみたいと思います。

まず誰もが、ひと目見て、
「おしゃれ・・・!」と感じるような、
近代的で、洗練された印象。

いわゆるシンプルな美を兼ね備えた
斬新で機能的なデザインから

安藤忠雄氏は、
ミニマリズム建築作家、

つまり、
形態や色彩を最小限に留めた表現の
建築家と捉えられることが多いようです。

個人邸宅などの建築物を手がけ出した
1970年代以降、
同時代の作家へ与えてきた影響も
大きかったのではないでしょうか。

打ちっ放し・コンクリートの先駆的存在

鉄筋コンクリートの建築物は通常、
コンクリートの上に塗装やタイル、
石張りなどの仕上げを施します。

ですが、
その仕上げをあえて省き、
むき出しのコンクリート地をもって
仕上げとするのが、
いわゆる「打ちっ放し」と呼ばれる工法です。

この工法は、
ベルギー生まれの建築家・オーギュストペレが
1923年に手がけたパリ郊外の教会
「ル・ランシー」に端を発し、

フランスを中心に広がっていきました。

1932年には、ル・コルビュジェも
パリ国際学生都市
「スイス学生会館」の外壁に、
この仕上げを試みています。

日本でもすでに戦前から、
フランク・ロイド・ライトの弟子として
知られるアントニン・レーモンドによって、

打ちっ放しコンクリートの建物が
つくられていたものの、

1970年代、安藤忠雄氏が
この手法の建物を発表した当時でも、

まだまだこうした建物は
斬新でした。

現在では
ポピュラーな手法になっていますが、

安藤作品の影響が、
大きいのかもしれませんね。

人々を惹きつける、ハイセンスでシンプルな造形

安藤忠雄氏による建築物をひと目見て、
「おしゃれ」と感じる人は、
多いのではないでしょうか?

華美な装飾や色彩はなく、
シンプルな造形は、
どこか近未来的でもありますよね・・・!

新しさに満ち、
そこに集う人々やものが主役となりえる場所。

そんなワクワクとした期待感が、
建物の美しさ、機能性とあいまって、
多くの人々を惹きつける魅力につながって
いるのかもしれません。

安藤忠雄の代表的な建築作品

【国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る

安藤忠雄氏は、1970年代には

主に個人邸宅などの小規模な建築、

1980年代には商業施設や、
教会などの中規模建築、

そして90年代以降は
大規模な公共施設・・・と

作品の規模を
どんどん拡大させてきました。

また1992年以降は、
海外の建築物も多数手がけています。

まずは彼の名を世に知らしめた、
長屋住宅からご紹介しましょう。

斬新すぎる! 長屋住宅などの住建築

20世紀の名作住宅のひとつともいわれる、
「住吉の長屋」は、
建築界に登場して間もない安藤忠雄氏が、
1976年に手がけた建築作品。

その名のとおり、長屋住宅です。

これは昔ながらの長屋が残る
大阪・住吉区のある地域で、
古い長屋を建て替えて
つくった個人の住宅。

間口はわずか2間、奥行7間という
コンパクトなコンクリートの箱は、

奥行方向に3分割され、
中央には中庭があります。

従来の長屋のイメージとは
うって変わって、

デザイナーズ・マンション
のようなイメージ。

壁や天井は打ちっ放しのコンクリート、
窓枠類はすべてスチール、
濃いグレーの塗装で、
全体的にグレーの色調。
とってもおしゃれです・・・!

トイレに行くには、
雨の日であれば傘をさして
中庭を突っ切らなければならない、

というこの住宅の構造は
不便さを通り越し親自然的
ともいえそうです。

この作品は高く評価され、
日本建築学会賞を受賞。

以後も、
打ちっ放し・コンクリートの壁面と
幾何学的なフォルムで、
独自の作風を確立し、

斬新な住宅作品を
多数生み出しました。

あの表参道ヒルズも! 商業施設のデザインワークも多数

2006年、
表参道の同潤会アパート跡地に誕生した
「表参道ヒルズ」も、
安藤忠雄氏の設計・デザインによるもの。

地下鉄表参道駅から
明治神宮へ続く並木道に、
全長250mにも及ぶガラスの壁面が調和して、
素敵な景観を形成していますね。

施設内には、
スパイラル状のスロープがあり、
その傾斜は並木道と同じ5度となっていて、
建物内に第二の表参道を
表現しているそうです。

ウィンドウショッピングの楽しさを
再確認させてくれるような、
心躍る空間ですよね。

安藤氏は他にも、
青山のコレッツィオーネや

京都市のTIME’Sなど、
多数の商業施設を
手がけています。

安藤デザインのお洒落な名所 美術館・教会などの施設も素敵!

安藤忠雄氏は国内にとどまらず、
これまでにアメリカ、
イタリア、ドイツ、中国など、

世界中で美術館や
博物館を手がけてきた、

まさに施設づくりの
スペシャリストです。

最初に携わった美術館は、
1992年、香川県直島町に完成した
「ベネッセハウスミュージアム」。

直島では以後、
その名のとおり地下に埋設の
「地中美術館」など、

ホテルと融合した
アート・プロジェクトを展開。

地域一帯を、アートの聖地たらしめ、
海外メディアからも注目されました。

教会の建築も手がけており、
1989年、大阪府に建設した
「光の教会」はコンクリートの
切れ目から降り注ぐ自然光が
十字となる、画期的なデザインです。

美術館、博物館、
文学館、教会など、

安藤氏によって生みだされた
各地の建築作品は、

いずれも、
どこか神聖な美しさを放っていて
その地域の名所に
なっているものが多数です。

新国立美術館で開催!「安藤忠雄展―挑戦―」

そんな安藤忠雄氏の、
半世紀に及ぶ挑戦の軌跡、
未来への展望に迫る展覧会が、

新国立美術館で、こ
の秋から開催されます。

会期は2017年9月27日(水)から、
12月18日(月)まで。

会場:国立新美術館 企画展示会1E+野外展示場
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:火曜日(祝日・振替休日に当たる場合は
開館し、翌平日に休館。)
公式ホームページ:http://www.nact.jp

ぜひ、
足を運んでみましょう・・・!

安藤忠雄の設計資料、計200点余りを一挙に展示」

展覧会「安藤忠雄展―挑戦―」では、
模型やスケッチ、ドローイングなど、

安藤忠雄氏の設計に関する資料を、
総計200点余りが展示されます。

稀代の建築家が、
どのようにして作品を
つくりだしてきたのか、

そしてここから先は、
どこに向かおうとしているのか、

存分に垣間見ることが
できそうです。

なんだかワクワクしますね・・・!

安藤忠雄自身による、展示の空間デザインも見どころ

今回、
展示が行われる会場の空間デザインも、
安藤忠雄氏自身の手によるもの。

安藤氏自身による空間を巡り、
彼が辿ってきた道筋を追体験しながら、

建築文化の奥深さ、可能性を
ぜひとも感じてみましょう。

 6つのセクションから迫る、壮大な挑戦と展望

展覧会「安藤忠雄展―挑戦―」では、
安藤氏の仕事の軸となる
キーワードごとに、

6つのセクションに分けて、
これまでの軌跡が紹介されます。

セクション1 安藤忠雄、そして人間の原点である「住まい」

「住む」という、
人間の根源的な営みの場である
「住まい」は、
安藤忠雄氏の建築の原点です。

セクション1「原点/住まい」では、
初期の代表作から近年の壮大な
スケールの海外作品まで、

100を超える住宅作品について紹介。

その後の作品にも一貫する、
打ち放し・コンクリートの手法や、
幾何学的造形、自然との共生・・・

安藤氏の作風や思想の原点が、
感じられそうです。

セクション2 教会作品に象徴される「光」

【国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る 【国立新美術館「安藤忠雄展―挑戦―」】挑戦し続ける建築界の巨匠・安藤忠雄の歩みに迫る

(外からの景色/中からの景色)

安藤忠雄氏の教会作品には、
先述の「光の教会」や、
北海道勇払郡にある「水の教会」など
があります。

いずれも簡素な構造でありながら、
採光や周辺の景観を生かした、

他にない、
神聖な空間となっています。

教会で結婚式をあげるカップルにも
人気のスポットだそうですよ。

今回の展覧会では、
なんとその「光の教会」を、
原寸大で野外展示場に再現!

既婚・未婚にかかわらず、
女子にとっては興味深い試みですよね…!

セクション3 都市のなかに誕生させた「余白の空間」

安藤氏が都市の中で
試みてきたことのひとつに、
「余白」の空間を創造があります。

意図してつくられた「余白」は、
人の集まる場所となり、
建築物自体が活気づくのです。

ここでは「表参道ヒルズ」や、
「東急東横線渋谷駅」など、
2000年以降の作品を俯瞰的に紹介。

普段何気なく訪れるスポットに
安藤氏のさまざまな思い、
挑戦が秘められていることを、
感じ取れることでしょう。

セクション4 環境との共生「場所を読む」

先述の直島プロジェクトを紹介する、
圧巻の空間インスタレーションも、
展覧会の大きな見どころです。

1980年代から30年余りに及んで手がけられ、
環境一体型、土地の個性を
際立たせる手法に徹した
ビッグ・プロジェクト、直島。

その全貌を見下ろしてみましょう…!

セクション5 歴史的建造物の再生「あるものを生かしてないものをつくる」

安藤忠雄氏は、
歴史の刻まれた建物の
保存・再生にも
意欲的に取り組んできました。

ここでは歴史都市・ヴェニスで実現した
「プンタ・デラ・ドガーナ」を中心に、
歴史的建造物を生かしつつ、
新しい息を吹き込む、

新旧融合の建築物について
紹介されます。

セクション6 環境再生運動などの取り組み「育てる」

建築という枠を超え、
自身の地元である大阪での
まちづくり活動や、

東京湾岸部での環境再生運動など、

社会活動にも旺盛な安藤忠雄氏。

建築づくり=環境づくり、と捉える
安藤氏の思想を綴った
ドキュメンタリー映像も上映されます。

安藤氏の情熱を、
映像から感じてみましょう。

大人のお出かけにぴったり!便利な新国立美術館

新国立美術館は、
交通アクセスの良さも魅力的です。
東京メトロ乃木坂駅に直結しており、
改札を出て案内通りに進めば、
あっという間に美術館の敷地内に…。

雨の日でも楽々のアプローチで、
待ち合わせにも困りませんね。

デート、散策、ショッピングも! 新国立美術館は周辺界隈も楽しい

新国立美術館の周辺は、
魅力的なスポットも多数。

少し足を伸ばせば、
東京ミッドタウンや
サントリー美術館などのほか、

檜町公園やミッドタウンガーデン、
乃木公園などの憩いの広場もあり、
大人女子の休日にぴったりですね。

デートや散策に、
ぜひ出かけてみましょう…!

老若男女から愛される、
竹久夢二とは一体どんな人物でしょう?
【画人・竹久夢二の人生】2017『命短し恋せよ乙女展』・『モチーフ図鑑展 』を弥生美術館にて開催中。若者からも支持される竹久夢二の素顔とは
ぜひこちらも合わせてご覧ください。

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ライター紹介 ライター一覧

makiko

makiko

芸術系大学出身。アート・恋に夢中だった学生時代、ヒールの高い靴を愛した独身時代を経て、現在はライター、イラストレーターとして活動するアラフォーママ。

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