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【万葉集】恋の歌を詠んだ女性たちの恋愛事情を探ってみる!【初心者向け】

万葉集アイコン

いよいよ令和の時代になりました!
この元号の漢字の由来は
日本人にはお馴染みの古典『万葉集』からであると
随分話題となっていますよね。

話題の『万葉集』って
今更聞けないけどどんな本なの?
古典だし和歌なんて詠まないから
私には難しいかもしれない…

そう考える方も多いと思いますが
実は読んでみると
『万葉集』の魅力は沢山あるんです!

今回は、そんな『万葉集』について
恋の歌を詠んだ女性歌人に焦点を当てて
ご紹介してみたいと思います!

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万葉集ってどんな本?どんな歌があるの?

万葉集イメージ3

『万葉集』ってそもそもどんな本でしょうか。
和歌が沢山ある事は知っているけれど
教科書で見た事はあるけれど
何となくしか知らないかも。

そのような方もいらっしゃるのでは。
というわけで
まずは万葉集の和歌に触れる前に
少しだけおさらいしてみましょう!

万葉集の成り立ち

万葉集は日本に現存する最古の和歌集です。
成立はなんと西暦780年前後で
奈良時代の末期です。
およそ130年間のなかで詠まれた歌が
全20巻の中に4,500首以上収められています。

長い期間で編纂されていますから
時代ごとに数巻ずつ編集されたものを
最終的に一つの歌集としたのだとか。

ちなみに編纂者に関しては
今も結論が出ていません。
ミステリアスなところも魅力の一つです。

万葉集イメージ2

万葉集の歌の内容は

雑歌
(旅先の歌や四季折々の自然について詠んだもの
もしくは宮廷に関する歌など)

相聞歌
(男女の恋を詠んだ歌)

挽歌
(人の死を悼む歌)

の三種類に大別されます。

表現の特徴

恋の感情を自然のものに例えた歌
感情を直接的に表現した歌
季節の風物を詠んだもの
自分の感情を表に出さず隠喩的に詠んだもの

などがあります。

今詠まれている短歌でも
よくある表現ですよね!
ですから
気負わずに読んでみれば
意外と楽しく読めてしまいますよ。

日本の和歌・短歌の原点でもある万葉集は
様々な魅力で
今日も多くの読み手に影響を与えています。

ちょっと読んでみたくなってきましたか?

万葉集のココが凄い!

万葉集イメージ4

それでは、万葉集の歌人たちは
一体どんな人々だったのでしょう。

それは文字が読み書きできる人々です。

(大丈夫です、筆者はふざけていません)

今でこそ文字の読み書きは大抵の人が出来ますが
奈良時代の当時において
文字を習えるような教育機関
武家や貴族だけのものでした。

「あれ?そうすると一般人の歌はないの?」

と思うところなのですが!
万葉集では
防人と呼ばれる下級兵士やその妻
僧侶や農民、漁民、遊女などなど
庶民と呼ばれる人々の歌も載っているんです!

これ、かなりすごい事なんですよ。
世界的に見れば、この時代の
日本人の識字率の高さが異次元です。

※どうしてそういった階層の人々が
文字を読み書き出来たのか
現在でも結論が分かれているところです。
少なくとも、農地の支給に伴った
戸籍制度があった為に、自分の名前の読み書きが
出来る農民は多かったようで、文字に対して
全く無知だったという訳ではないみたいです。

しかも万葉集では
天皇を初めとした高貴な身分の方と
庶民の歌が同列にまとめられているんです。
身分の差だって男女の差だって
和歌の前には皆平等。
良い和歌の前には人類皆平等の精神。
これもすごい。

様々な人が自分の心の内を和歌に託した万葉集。
その思いは男女も身分も世代も超えて
現在の私達にも通じている。
こんな素敵な歌集、中々ないですよね。

万葉集から生まれた新元号「令和」由来と意味

いよいよ「令和」の始まりです!
この項では
「令和」という字の由来となった
万葉集の歌について簡単にご説明いたします!

歌を読むことで
「令和」という漢字に込められた意味も
見えてくるかもしれません。

万葉集イメージ1

新元号「令和」の典拠は
「巻五 梅花の歌三十二首并せて序」という
天平2(730)年の正月に大伴旅人が催した
「梅花の宴」という宴席で詠まれた
32首の冒頭を飾った序文です。

内容は

————————————————————

初春の令月にして、気淑く風和ぎ
梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後*の香を薫らす

[現代語訳] 時は良き新春正月、外気は快く風は和らいで
梅は佳人の鏡台の白粉のように白く咲き
蘭は香袋のように香っている

※珮後(はいご)とは
直接的には瑪瑙などの飾り物(装飾品)ですが
文中で蘭という花の匂いについて歌っているので
文脈上香袋などの言葉を当てはめています。

————————————————————

この歌にある「初春の令月」の「月」とは
「何事をするにもよい月」
という意味を持ちます。

新しい時代に移り変わる中で
順風満帆な出発を思わせる言葉ですね。

新元号発表の際に安倍首相が開いた会見では
「人々が美しく心を寄せ合う中で、
文化が生まれ育つ。
梅の花のように、
日本人が明日への希望を咲かせる」
という思いを込めたと語っています。

元となった歌と合わせて
今一度「令和」という二文字について見てみると
なんとも新しい時代の風が吹いてきそうな
(しかも梅の香りつき)
典雅で日本人らしさを感じる元号に感じませんか?

新しい時代がどんな時代になるのか
楽しみになってきますね!

万葉集イメージ5

万葉集のおすすめ恋の歌

それではいよいよ万葉集の歌を見ていきましょう。
今回は万葉集に登場する
5人の女性歌人の歌を紹介いたします。

千年以上も前の女性たちなのに
恋の悩みは今と通ずるものがあり
悲喜こもごもの思いが込められています。

磐之媛命 -嫉妬深い皇后、浮気症な天皇の歌のやりとり-

浮気や嫉妬は恋愛に付きものですが
万葉集の時代も同じだったようです。

万葉集の初期に登場する
磐之媛命(いわのひめのみこと)もその一人。
この方は大変な焼きもち焼きでした。

それに対し夫の仁徳天皇かなりの浮気性
磐之媛があまりにも他の女性をいじめるので
仁徳天皇は宮殿を離れたときか
磐之媛が宮殿を離れた時に女性を迎え入れるしか
他の妾に会えなかったようです。
…仁徳天皇も大概ですね。

 

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秋の田の穂の上に霧らむ朝霞
何処辺の方に わが恋止まむ
[訳]秋の田に実った稲の穂並。その上に
立ち込める朝霞はいつの間にか消えてしまう。
あれみたいに私の恋もどこかへ
消えていって欲しいのだけど
————————————————————

これは思うようにいかない心の苦しさを詠んだ
磐之媛の歌です。
また

 

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かくばかり恋いつつあらずは高山の

磐根し枕きて 死なましものを
[訳]これほどまで恋しさに苦しみ続けるより
いっそ高い山の岩を枕にして(山稜の石室に
葬られて)死んだほうがましね
————————————————————

このような激情を詠んだものもありました。

磐之媛のエピソードにはこんなものがあります。
彼女が祭礼に使う葉を取りに
紀伊国(現在の和歌山県)に出かけたときの事。

仁徳天皇は八田皇女という女性と良い仲になり
宮中に召し入れてしまいました。
これを知った磐之媛は大激怒。
取ってきたばかりの御綱葉を海に投げ入れて
山城の国まで家出してしまうのです。

ちなみに山城の国は別に彼女の実家などでは
ありません。どうして実家に帰らないのかと言えば
実はこの姫、初めて皇族外から皇后になった
葛城家の娘。

父君は対朝鮮外交で名を馳せた方だったようで
この二人の結婚には政略的な事情もあって
おいそれと「実家に帰らせていただきます」など
言えない立場だったのかもしれません。

とにかく仁徳天皇も磐之媛の家出に困り果て
使者を派遣したり歌を贈ったり
何とかご機嫌をとるんです。

 

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山代に い及(し)け鳥山 い及けい及け
我が愛妻に い及き遇はむかも
[訳]山代(に行ってしまった奥さんに)追いつけ
鳥山よ。追いつけ追いつけ、私の可愛い妻に
追いついて会ってくれ
————————————————————

何とも調子の良いことを言っている歌ですが
磐之媛は何とか怒りを解いて
「(この山城にいるのは)珍しい不思議な虫を
見たかったからです」と言い
「そのような珍しい虫がいるなら私も見に行こう」
と出向くことで一応の終結を見せました。

ただ後日談として
仁徳天皇はこの時、八田皇女にも歌を贈り
しかもすげなくされたというオチまでつきます。

嫉妬深くツンデレな皇后の歌は
歴史に名を残すほどの深い情念がこもっています。

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額田王 -二人の皇子との三角関係を匂わせる歌-

万葉歌人と言えばこの歌!

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あかねさす紫野ゆき標野ゆき
野守は見ずや 君が袖振る
————————————————————

このあまりに有名な歌は
歌以外の史書にあまり登場しない
ミステリアスな才女・額田王(ぬかたのおおきみ)
が詠んだものです。

まずはこの歌の背景にある
額田王と二人の皇子との関係を紐解いてみましょう。

額田王の最初の恋人は大海人皇子(後の天武天皇)。
皇極天皇の大和から近江への行幸に付き従った時に
額田王が詠んだ歌

 

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秋の野のみ草刈り葺き宿れりし
宇治のみやこの 仮廬し念ほゆ
[訳]秋の野のすすきを刈って屋根に葺き泊った
あの宇治の仮の宿が懐かしく思い出されます
————————————————————

当時の恋人、大海人皇子とのロマンス
ほんのり漂う歌です。

大海人皇子とは子をもうけましたが
その後、皇子の兄天智天皇として即位すると
どのような経緯があったか定かではありませんが
額田王は天智天皇の妻となったようなのです。

ドラマチックな展開を想像(妄想)しますと
権力にものをいわせた天智天皇が
弟の美しい妻を強引に娶った
なんて考えてしまいます。
こんな妄想をしながら次の歌を読むと

 

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三輪山を しかも隠すか雲だにも
情あらなむ 隠さふべしや
[訳]三輪山をどうしてこのように隠すのですか
せめて雲だけでも心あって欲しいものです
隠さないでくださいね
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ちょっと意味深長です。
この歌は「額田王の近江の国に下りしとき」という
詞書がついた長歌の反歌です。
(反歌とは長歌の後に添える短歌のことです)

天智天皇6(667)年に
が飛鳥から近江の大津に遷都しました。
そのときに近江に向かう旅の途中で読んだこの歌。

住み慣れた故郷を離れる寂しさだけでなく
かつての恋人との楽しかった記憶
切なく思いながら詠んだのではないでしょうか。
※筆者の楽しい妄想です。

 

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そんな苦い恋の結末から時は流れて
天智天皇7(668)年初夏、
近江の蒲生野で遊猟が催された時に
あの歌が詠まれました。

————————————————————
あかねさす紫野ゆき標野ゆき
野守はみずや 君が袖振る
[訳]茜色のあの紫草の野を行き
その御料地の野を歩いているときに
野の番人は見ていないかしら
ああ、あなたそんなに袖を振らないでよ
————————————————————

この当時、「袖を振る」と言えば恋しい人の魂を
自分の方へ引き寄せるという特別な仕草でした。
天智天皇の妻となっている額田王が
「袖を振らないで、見つかるじゃないの!」
なんて言った相手は
かつての恋人、大海人皇子。
この歌に返された歌

————————————————————
紫草のにほへる妹を憎くあらば
人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
[訳]紫草のように香れる君がもし憎かったなら
今は兄の妻の君をどうして恋慕うことがあるものか
————————————————————

人前で詠むには随分と過激な臭いのする二首。
実は、現在では宴席の戯れで読まれたと見るのが
通説なんだそうです。

でも、この遊猟が催されたときには
額田王や大海人皇子も中年ぐらいの年齢だった
という事ですから、
大人になった二人がかつての恋を懐かしみ、
戯れの中に青春の日々を感じながら詠みあった
なんて想像(妄想)すれば
これはむしろかなりロマンチックですよね。

 

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この頃には額田王も天智天皇に気持ちがあり

————————————————————
君待つとわが恋ひ居ればわが屋戸の
すだれ動かし 秋の風吹く
[訳]君を待って恋しく思っていたら
私の家の簾を動かして秋風が吹きます。
————————————————————

という歌を詠んでいます。
ここで言う「君」は天智天皇です。
待つ日々に心を動かすのは狂おしい情熱ではなく
心に寂しく通る秋風というのが
穏やかな晩年の愛の形を感じさせます。

二人の皇子に愛された謎の多い女性歌人、額田王。
その愛の言葉は今も
読む人を魅了してやみません。

 

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大伴坂上郎女 -恋多き才女の歌-

額田王と並ぶ万葉女性歌人といえばこの方。
大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

圧巻の84首が万葉集に載せられています。
この方は穂積皇子、藤原麻呂、大伴宿奈麻呂と
三人の男性と結婚した経歴を持つだけでなく
数々の男性と恋の文をやり取りした
まさに恋多き才女です。

そんな彼女の歌った相聞歌は
何故か片思いの歌が多いのです。

 

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————————————————————
夏の野の繁みに咲ける姫ゆりの
知らえぬ恋は 苦しきものぞ
[訳]夏の野の繁みに咲いている姫ゆりが
誰にも知られないように
相手に知られていない私の恋
苦しく切ないものです
————————————————————

何とも乙女心溢れるフレッシュな恋の歌。
言葉選びの鮮烈さが印象的です。
少女のひそやかな片思いを美しく歌っています。

その一方で

 

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ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく
照れる月夜の見れば悲しさ
[訳]夜霧が立ち込めて
ぼんやりと照る月夜を見れば悲しいことよ
————————————————————

こちらは少し大人な情景。
月夜や夜霧といった幻想的な美しさ
一人で夜を過ごす女性の寂しさが切ないですね。

少しご紹介しただけでも分かるとおり
坂上郎女の歌は技巧的
言葉の選び方や構成の仕方を見ても
どれも巧みでよく計算されています。
完成度が高い。

その為、坂上郎女の数々の恋の歌は
彼女が実際に恋をしたというよりは
豊かな才に任せて詠み散らされたものだった…
そんな気がします。

晩年の坂上郎女はこのような歌を詠んでいます。

————————————————————
恋ひ恋ひて逢えるときだに愛しき
言尽くしてよ 長くと思はば
[訳]何度も恋いてようやく逢えたその時ぐらい
愛おしむ言葉をかけて下さい。
この恋が長く続くようにとお思いならば
————————————————————

ちょっと上から目線な感じがしませんか?
特に「言尽くしてよ 長くと思はば」の部分。
これ、本当に上から目線なんです。
この歌は、坂上郎女の娘、大伴坂上二嬢の恋人
大伴駿河麻呂に向けて詠んだものとされています。
恋愛指南の為に送ったのだとか。

 

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「うちの娘との恋を長く続けたいなら
きちんと言葉にして愛を囁いてね」
という義母からのありがたいお言葉。
ちょっと怖い。

きっとこの駿河麻呂のように
坂上郎女に女性の心を指南してもらった
若い男性もいたのではないでしょうか。
だからこそ、こんなに沢山の
恋の歌が詠まれたのかもしれません。

笠女郎 -片恋の果てのストーキング!?-

坂上郎女ほどではありませんが
笠女郎(かさのいらつめ)も多くの恋歌を詠んだひとり。

万葉集には24首収められています。
その全てが一人の男性に向けられた恋の歌
何とも情念深いというか…

そのお相手は
万葉集編纂に貢献した万葉歌人
大伴家持です。
しかも家持には最愛の奥さんがいるのです。

万葉集初出の笠女郎の歌はこちらです。

————————————————————
我が形見見つつ思はせ荒珠の
年の緒長く 我も思はむ
[訳]この形見を見ながら私のことを思い出して
あらたまの年を経ても長く
私もあなたを思っていますから
————————————————————

重い!!
のっけから重過ぎませんか!!
この「年の緒ながく」とは
何年も会えないことを言っているのですが
別にどちらかが亡くなったわけではなく
家持が国守として
越中(現在の富山県高岡市)に
行くことになったことが理由でした。

遠く離れた地へ行ってしまった家持。
姿を見ることも出来なくなり
笠女郎は彼を思って歌を詠みます。

 

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————————————————————
白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ
吾が恋ひ渡る この月ごろを
[訳]白鳥が飛ぶ飛羽山の松のように
待ち続けています
私はあなたを恋しく思いながらこの月日を

衣手を打廻の里に有る我を
知らにそ人は 待てと来ずける
[訳]衣の袖を打つ打廻の里にいる
私の心も知らないで
あなたは待っていても来てくれはしませんね
————————————————————

この2首に登場する地名について、面白い説があります。
飛羽山は現在の福井県鯖江市で
打廻の里は現在の石川県河北潟沿岸ではないか
という説です。

これが本当だとしたら
越中のすぐ近くまで
笠女郎はやってきていたのかもしれません。
しかも家持に
「私今、○○にいるのよ」
という手紙まで送って。
愛の深さが若干恐ろしいのは筆者だけでしょうか。

そんな行動力の塊だった(かもしれない)
笠女郎の恋は
とても思うようにはいかなかったようです。

家持の妻は大伴坂上大嬢、そしてその母はなんと
先にも紹介しました、あの坂上郎女
この義母はおいそれと裏切ることは出来ません。
何せ坂上郎女は大伴一族を取り仕切る
女刀自の地位にいたのですから。

笠女郎もその事情を十分に分かっているからか
家持との関係をひた隠しにしています。

————————————————————
我が思ひを人に知れるや玉くしげ
開きあけつと 夢に見ゆる
[訳]私の思いを人に知られたのか
玉くしげの蓋を開けるように明らかになったと
夢に見ました
————————————————————

 

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玉くしげとは櫛を入れる箱の事で
この箱が開く夢は当時において
秘めていたものが他人に知られた事を示す暗示
言われていました。
他人の知るところとなって
恐ろしさ半分嬉しさ半分といったような
複雑な恋心が詠まれているように思います。

万葉集において笠女郎が家持にあてた歌は28首。
対して家持が笠女郎にあてた歌は2首のみでした。

————————————————————
今更に妹を逢はめやと思へかも
ここだく吾が胸 鬱せくあるらむ
[訳]もうこの上あなたに逢えないと思うからか
これほどまでに私の胸が鬱々としているのは

なかなかに黙もあらましを何すとか
相見そめけむ 遂げざらまくに
[訳]いっそ黙っていればよかったのを
何故に逢い始めたのだろう
遂げられそうもない愛なのに
————————————————————

笠女郎と家持の温度差ちょっとすごい。
むしろ家持、遠まわしに
「付き合えない」と言ってませんか?
笠女郎がありったけの心を注いだ恋は
きっと少ない逢瀬で終わってしまったような
切ないものだったのでしょう。

それでも家持が編纂に携わった万葉集に
笠女郎の歌を28首も載せている事からは、
家持の笠女郎への敬意があるように思えます。
それが男女の愛だったのか分かりませんが。

狭野弟上娘子 -歌が伝える、身分違いの恋と悲劇-

女性歌人の悲しい恋の話は
万葉集にもう一つ収められています。

————————————————————
君がゆく道の長路を繰りたたね
焼き亡ぼさむ 天の火もがも
[訳]あなたが(流刑で行く)長い道のりを
手繰り寄せて、折りたたんで、
焼き払ってしまえるような、
そんな天の神の火が欲しい
————————————————————

 

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この苛烈な歌を詠んだのは
奈良時代の下級女官、
狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)でした。
蔵部女儒という役職で天皇に仕える女官です。

彼女は中臣宅守(なかとみのやかもり)
恋仲になりますが、宅守は何故か
越前へ流罪となってしまうのです。

宅守の罪状は明らかになっていませんが
一説によれば
身分の違う弟上娘子と結ばれたが故の罪だとか。
理不尽な時代です。

冒頭に載せた歌は
娘子が越前に旅立つ宅守に向けて歌った歌でした。

道を手繰り寄せて、畳んで、焼き亡ぼしたい。
そして天の火とは
人の悪行を罰する天の災いとされています。
理不尽な罪により旅に出る宅守の行く道を
焼き尽くしてしまいたいという娘子の悲しみと
強い憤りが感じられる歌です。

越前の国に着いた宅守
娘子にこんな歌を送りました。

————————————————————
逢わむ日をその日と知らず常闇に
いづれの日まで 吾恋ひ居らむ
[訳]逢える日をいつの日とも知らないまま
この世が真っ暗闇のように泣き暮らして
いつまで私はあなたに恋焦がれているのだろうか
————————————————————

宅守も、遠く離れた地でひとり絶望していました。
離れ離れになった二人は
命を削るように歌を贈りあいます。

万葉集イメージ6

————————————————————
天地の神なきものにあらばこそ
我が思ふ妹に 逢はず死にせめ
[訳]天の神々がいらっしゃらなければ
私の恋する人に逢わずに死んだだろうに
(神々が彼女に引き合わせたばかりに)
<中臣宅守>

命あらば逢ふこともあらむ我が故に
はだな思ひそ 命だに経ば
[訳]命があれば再び逢える事も出来るでしょう
私のためにひどく思い煩わないで下さい
命さえ生きながらえれば
いつかお逢いできるのですから
<狭野弟上娘子>
————————————————————

二人のやり取りは
命や死を想起するものばかりでした。

万葉集イメージ7

宅守が断罪されて数ヵ月後、大赦があり
流刑になった人々が入京を許された
という出来事がありました。

しかしそこに宅守の姿はありません。
娘子は

————————————————————
帰りける人来たれりと言いしかば
ほとほと死にき 君かと思ひて
[訳]赦免されて帰ってきた人が都に着いたと
伝え聞いたので あやうく死にそうでした
貴方かと思って
————————————————————

…と一時絶望の淵に立たされながらも、
気丈に次のようにも詠みました。

————————————————————
我が背子が帰り来まさむ時のため
命残さむ 忘れたまふな
[訳]あなたが帰って来られるときの為に
命を残しておきましょう
お忘れにならないで
————————————————————

万葉集では
この二人の悲恋の結末は語られていません。
ただ、二人のやり取りの最後が宅守の
この独詠に終わっていることから
悲しい終わりを暗示していると
指摘している人もいます。

————————————————————
我がやどの花橘はいたづらに
散りか過ぐらむ 見る人なしに
[訳]我が家の庭の橘の花は
むなしく散っていることだろう
見る人もなく
————————————————————

 

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おわりに

いかがでしたか?
一見すると難しそうな万葉集ですが
現代の女性も共感できるような歌が
沢山あったのではないでしょうか。
歌を詠んだ人の背景も一緒に詠むと
中々奥深いものがありますよね。

ちなみに筆者の好きな歌は
大伴坂上郎女の

————————————————————
夏の野の繁みに咲ける姫ゆりの
知らえぬ恋は 苦しきものぞ
————————————————————

です。
夏の野山の深緑の中に
ちんまりと咲いている姫ゆりの赤色
コントラストがすごく素敵です。

新しい元号となり
時代は移り変わりましたが
面白い作品は決して色あせません。

千年以上も前に
人々の心を鮮やかに写し取ったこの歌集を
新しい時代の始まりに
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

きっとお気に入りの歌が見つかりますよ。

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紙山 弥実香

紙山 弥実香

図書館勤務経験を持つ趣味人。
自宅の本棚は分類番号と作者の名前あいうえお順で並べることをポリシーとしている。将来自宅に壁一面の書庫を作ることを目標に日々節約している。

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